ある秋の出来事
随分前の出来事
彼とのドライブデートの帰りだった
その日は夕焼けがとても綺麗で、夕日に照らされてススキが金色に輝いていたのを覚えている
それほど口数が多い方ではなかった彼が
ふと「ずっと一緒だよ」そう言った
そして、何を思ったのか
急に「自分で淹れたブルーマウンテンのコーヒーを飲ませたい」と言い出した
「そんなのいつでも飲めるから今日じゃなくてもいいよ」そういった私の言葉も耳に入らず
車を走らせ、コーヒーメーカーとブルーマウンテンのコーヒー豆を買いに行った
なぜ今日じゃなきゃいけないのか?そう思いながら私は彼に付き合った
目的のものを購入し、彼の家へ
そして彼は満足そうにコーヒーを淹れ、家族と私に振舞ってくれたのだった
その翌日から、彼はいつもやっているチャットで、なかなか返事をしてくれなくなった
なぜ?いつも一緒だよって言ったじゃない
急に冷たくなった彼に憤りを隠せず、なぜなのか問い詰めた
「どうしても連絡を取っておきたい人がいるんだよ」彼は言った
少しして、いつものようにデートを楽しんだ時「この前はごめんね、どうしても連絡が取っておきたい人がたくさんいてチャットできなかったんだよ」彼のその言葉に、私はなぜだか釈然としなかったが、「こんな時もあるよね」位の気持ちで聞いていた
そしていつものように次のデートの日を決め別れた
しかし、彼はその翌日突然の心臓発作で亡くなってしまった
私は目の前が真っ暗になり、長い時間悲しみに暮れた、もう生きていても仕方ないと思えるくらい悲しく辛かった
それからどれくらい経った頃だろう
少しづつ落ち着きを取り戻した私は気がついた
彼は自分に残された時間が少なくなっていることを何となく分かっていたんじゃないか?って
そう思ったら、彼の無くなる前の行動が理解できるような気がした
きっと、彼のありったけの愛と感謝を、残された僅かな日々の中で綴ったんだと
私は今日も生きている、心の中で生き続ける彼と共に